次の瞬間に前を向いたとき、彼はそこに居なかった。
絶望しかけた私が感じたのは、違和感。
一体何が起こっているのだろう。まるでスローモーションの様に世界が感じられ、瞬きをする度に景色が変わる。
最初に左の男の手が離れ、次に右の男が鈍い悲鳴を発し、最後に後ろの男が倒れた。
膝の力が抜け、私も知らぬ内に地べたに座り込んでいた。
私の周りで倒れる3人の男たち。反撃さえさせる暇も作らずあっという間に、それを成し遂げた彼は、再び私の前にいた。
そして無言で手を差し出す。立たせてくれるってことなのかな…。
有難く手を借りようと彼の手元を見た瞬間、心臓がドクッと鈍く大きな音を立てる。



