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どうしてその夜に限って、目が覚めてしまったのだろうかと。
私はずっと苦しむことになる。
階下から聞こえるおかしな音。
僅かな光が漏れるリビング。
いつもとは何か違う雰囲気を感じて、こっそりと覗いてしまった幼き私。
「パパ…?」
オレンジ色の常夜灯が作り出す黒い影に、私は隠れていたことも忘れて声をかけた。
妙に静まり返った空間に私の声を聞いたママが振り返ったあのときの顔と、
それほど広くないリビングに充満する、むせ返る程の濃いあの匂いを。
私は忘れられない。
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