カリンガ王家の宝と、そして攫われた弟を探す旅。
エレオノア姫の胸中には、どれだけの嵐が吹き荒れているのだろう。

馬車はどうしても速度が落ちるので、エレオノア姫も騎馬で旅程を進んでいる。
イスラム圏の女性が身にまとうブルカのような装束で、全身をすっぽり覆っているのは、陛下の命だろうか。

ちなみに蓮くんはといえば、少年の体の軽さのおかげかわたしと違って股ずれに悩まされることもなく、涼しい顔で馬に揺られているのが羨ましい。

そうして宮殿を立って十日ほど、一行はバルバンダに到着した。
バルバンダは帝国の北西に位置する、広大な荒野だ。聞き知ったところによると、国家というべき組織は存在せず、古来からその地に住む数万人といわれるザンテ族が、数十人単位のコロニーを作りひっそりと暮らしを営んでいる。
放牧と織物と、探検に来た旅人の道案内が、彼らのわずかな収入源だ。

カリンガの宝を探すためには、この荒野で定住せず、家畜を連れて移動しているザンテ族のコロニーを探さなければならないという。