「…わかった」


それなら今だけ了承しておいて、お昼に行かなければいい話だ。


頷かないといつまで経ってもここから進めない。



「待っても来なかったら教室まで迎えに行こうかな。どうせ俺、午後からしか授業出ないし」



げ、嘘でしょ。


私が行く気がなかったのバレてた。


教室に迎えに来られたら相楽くんと少しでも関わりがあると思われるのは間違いない。


面倒なことが起こるのは簡単に想像がつく。




「はぁ…行くから来ないで」



仕方なく相楽くんの言う通りお昼に第3音楽室に行くことにした。



先程の素直に言うことを聞いてくれた相楽くんが幻覚だったのかなと思うくらい。


目の前の男はこうなる様に仕向けた。



「待ってる」




どこまで読んでいるのかわからない底が知れない人。



それが今の私が相楽くんに抱いている印象になった。



手を離してくれたから今度こそ足を進めて、振り返らずに教室に向かった。