「なにあれ!」と昼休みの休憩スペースで怒りを爆発させたのは紗江子だ。
お昼のメニューは、お弁当屋さんで買ったチキン南蛮弁当。今日はサラダが安かったからポテトサラダのおまけつき。

「今度はなに? また土田さん?」
「違うよ、緒方さんにムカついてるに決まってるじゃん! なにあれ! 保身しつつ遠回しに澪の悪口言って! しかも自分が桐島さんに似合ってるとか!」
「え、聞いてたの? 朝のだよね?」
「聞いてたよ! 澪が呼び出されたのを後つけていって壁に隠れてこっそり! もし澪が目立つからって嫌味言うつもりなら加勢しようと思って腕ぶんぶん回してたんだから!」

それはあまり威張れる事でもないけれど、紗江子があまりに堂々と言うから思わず笑いが漏れる。

「やっぱり私悪口言われてたんだ」
「完全に言われてたじゃん! 周りのせいにしつつ、冷たそうとか無愛想とか! 澪への悪口も緒方さん自身への賛美も周りが言ってるってことにしておけば自分は無罪だもん。それ分かって言ってる感じだったし、すっごい計算高いじゃん。澪が全然言い返さないから飛び出して行こうかと思った」

口を尖らせる紗江子を「まぁまぁ」と落ち着かせる。