「俺をヒーローみたいに救ってくれた相沢さんは、当たり前だけど普通の女の子で、しかも人よりも不器用なところがあったり、男が苦手なのに無防備なところがあったりで……守ってあげたいと思うようになった。いや、守ってあげたいなんていうのはよく言いすぎかな。本当は独占欲とか、そういう自分勝手な感情だと思う」

ヒーローなんかじゃない、という言葉を飲み込んだのは、桐島さんの話をもっと聞いていたかったから。
じっくりと、私を想ってくれているんだと伝わってくる眼差しも雰囲気も声のトーンさえもが、胸を高鳴らせていた。

「ああ好きだなと思ったのは、話すようになってすぐ。いくら一緒にいても足りないと思う自分に気付いて驚いたけど、そういう感情を持てる自分が嬉しくなった。他人と比べてどこか冷めてるっていうのは自分自身気付いてたから、気持ちを自覚してからのこの三週間は俺にとってすごく新鮮で有意義だった」

三週間、という期間を言われ、まだたったそれだけしか経っていないことに内心驚く。
でも、早く感じたということはそれだけ濃密だったという意味で……私にとっても間違いなく新鮮で有意義な時間だった。

「だから、ごめんね。こんな重たい想いを聞かされてひかれたかもしれないけど、手に入れた以上、たぶんもう離してあげられない」

私が床に置いていた手に上から触れた桐島さんが、申し訳なさそうに微笑む。
そんな彼をじっと見つめてから、もごもごと口を動かした。

伝わってくる熱に、ドキドキする。

「私、桐島さんが初恋なんです」
「うん」
「恋愛したことのない私の、夢とか願望とかが詰まった想いの方がきっと面倒くさいし重たいですよ。だから、逃げ出すとしたら桐島さんです」