桐島さんが部屋を訪ねてきてから一時間。
ローテーブルの上には、ビーフシチューとサラダ、それに数種類のパンが置いてある。シンプルなバターロールから菓子パン、総菜パンまで種類は色々だ。
ビーフシチューが苦手な私は、パンとサラダで夕飯を済まそうと思ってパン屋さんで帰りに買ってきたものだった。
陸はひょろっとした外見からは想像もつかないほどたくさん食べるから、ビーフシチューもひとり分にしては多めに作ったし、陸用のパンだって四つも買ってきていた。
だから、いくら桐島さんが食べてくれても、結局半分くらいは残ってしまうだろうなぁと予想していた。
けれど、食べ始めてから二十分もたたないうちに、ビーフシチューもパンも残りわずかとなっている。
どこに消えたのかというと、言うまでもなく桐島さんのお腹の中だ。
陸ほどではなくても細く見えるのに……と驚く。
「あの、無理しないでくださいね。私のせいでお腹壊したりしたら申し訳ないので……」
「いや、普通においしくて食べてるだけだから。相沢さん、料理上手なんだね」
キラキラとした笑顔で褒められ、その眩しさに、う……っと顔を背けたくなる。
真正面から褒められるのには慣れていない。



