私の質問に答える気はないのか、口を噤んだままの桐島さんに、どうしたらいいのかわからなくなっていた。

桐島さんの視線は満月を映す池に向けられていて、その先に川田さんがいるというわけでもない。

……もしかして、怒ってる?
ふと、その可能性が頭に浮かび血の気が引く。

自分の気持ちに気付いてからというもの、桐島さんを避けていた。
顔を合わせてもそわそわした落ち着かない態度をとっていたし、メッセージ返信のレスポンスも遅かった。

私が繰り返す失礼な言動にいい加減我慢の限界がきたのかもしれない。いくら桐島さんの器が大きいからといって、限度はある。

頭の中に浮かぶ〝でも、だって桐島さんがおかしな態度をとったり思わせぶりな言葉を言うから……〟という言い訳をふるい落とす。

私が悪いのは自分でもわかっていた。
だから、謝る覚悟を決め、向き合うように立つ方向を変えた途端、桐島さんが大きなため息を落とした。

むしゃくしゃした様子で、空を仰いだ桐島さんに、もしかして幻滅されたんじゃ……と不安に襲われた瞬間、彼の視線が私をとらえた。

満月の明かりを受け光る瞳に心臓がドキッとした。