それにしたって……どうして数日と空けずに現れるのだろう。
まるで、私に桐島さんから離れる時間を与えないようにしているみたいにすら思えてくる。

付き合っているならまだしも、そうじゃないならおかしい頻度だ。

それを桐島さんだって気付いていないわけではなさそうなのに……と考えながらゆっくりと振り向く。

いつの間にかすぐ後ろに立っていた桐島さんは、私と目が合うなり、困ったように眉を寄せた。

「急にごめん。実は川田から連絡があったんだ。やっぱりもう一度話したいって」
「……え?」

想像もしていなかった発言に驚き声を漏らした私の手を、桐島さんがとる。

「悪いけど、少し付き合ってもらってもいいかな」

言いながら歩き始めた桐島さんに引っ張られるようにして歩き出す。

「でも、川田さんなら『もう会わない』って言って……」

つい先週の話だ。本屋で会ったときにそう聞いた。
その時の川田さんの表情や声からは嘘の気配は少しもしなかった。

だから、なにかの間違いじゃないかと思い話し出したのだけれど、桐島さんは最後まで聞かずに「ごめん。急ぐから」とぴしゃりと押さえつけるように言った。

そして、たった一メートルの距離がもどかしいとばかりに、手を離し、私の肩を抱く。
ぐいっと強い力で抱かれた肩に心臓が跳ね上がった。