まだ頭を撫でてくる手を軽く振り払いながら、口を開く。
咄嗟の出来事にプチパニックだった頭が、ようやく落ち着きを取り戻していた。
「桐島さんだって、学生時代は目立って大変だったんじゃないですか?」
なんでもそつなくこなしそうだし、面倒見もよさそうだ。きっと生徒だけじゃなく先生からの信頼も厚かっただろうな……とそこまで想像したのに、桐島さんは意外にも「そうでもないよ」と笑って否定した。
「スムーズにやり過ごすために昔から人当たりのよさを意識してるから、優しく思われるかもしれないけど、実際はそうでもないしね」
苦笑いを浮かべながらの言葉には納得がいかなかった。
だって、これ以上ないほどに優しい、穏やかな微笑みで言われても納得できない。
だから「本当に……?」と眉を寄せると、桐島さんはうなずいてから続ける。
「見るからに困っていたら手を貸すかもしれないけど、そこに面倒そうな要素があれば多分、放っておく。ただの正義感だけじゃ動かないし、打算的で案外冷たいよ。事なかれ主義な部分もあるし、性格の悪さは自覚はしてる」



