「相沢さんらしい姿、とでもいうのかな。自分の感情を素直に声に出す、気持ちいい位に真っ直ぐな姿を俺が見たかっただけ」

満足そうな微笑みで言われて、考えてしまった。

だって、桐島さんとはきちんと話すようになってまだ二週間も経たない。それなのに〝私らしい〟なんて……まるで昔から知っているような表現はおかしい。

聞こうとしたけれど、桐島さんの「そういえば、急に手握ってごめんね」という言葉に止められる。

「え……手?」
「相沢さん、例の件があってから男に少し苦手意識があるみたいだったから……もし気分を悪くさせてたらごめん」

真面目に謝ってくれる桐島さんに慌てて首を振る。

「いえ、昔のことですし引きずっているわけでもないので大丈夫です。……その、ただ男性慣れしていないというか、経験値が圧倒的に足りていないだけなので」

私の変な反応のせいで気にさせていたなら逆に申し訳ないと思い、恥ずかしさを感じながらも正直に言う。

でも、言ったものの二十四にもなって経験がないなんてどう思われたかな……と今更ながら少し怖くなっている私に、桐島さんは頬を緩めた。

「じゃあ、相沢さんが嫌じゃなければもう少し増やそうか。経験値」
「え」

差し出された手の意味に気付き、思わず足が止まる。