少年の名前は、フレディ・バンクスといった。
「フレディ様は生まれつき体が弱く、ベッドで寝たきりの生活が続いていたのです。ですが、二年前最新の治療法を試したところ、徐々にですが病状が良くなり、最近はずいぶん動けるようになりました。それで、先生に来ていただき、体を鍛えているのです」
彼の護衛が、給仕を引き受けたエリシュカに説明してくれる。
作業が中断したため、リアンも一緒に居るのだが、不貞腐れたように頬杖をついて座っている。
「そうなんですね」
エリシュカは慣れた手順でお茶を入れた。テーブルには、フレディとモーズレイ氏が向かい合って座っている。
フレディはお茶を一口含むと、うれしそうに笑った。
「君はお茶を入れるのが上手だね。とてもおいしいや」
「ありがとうございます」
エリシュカがほほ笑み返すと、フレディは気をよくしたようだ。
「君、魔道具店の店員って言ったよね? 年は幾つ? 僕の友達にならないか?」
「と、友達?」
「そう。僕は体が弱くて学校に行けなかったから、同じ年頃の友達がいないんだ。友達が欲しいんだよ」
フレディはその年頃にしてはとても無邪気に笑う。学校にも行けていなかったというし、純粋なのだろう。友人が欲しいという気持ちはわからないでもないけれど、今のエリシュカには無理だ。
首を横に振って拒絶を示すと、彼はにわかに落ち込んだ。
「駄目か。……やっぱり誰も僕なんかとは友達になってくれないのかな」
「フレディ様が駄目ってわけじゃありません。友達って、なろうって決めてなるものじゃないのでは? フレディ様のことを何も知らないのに、いきなり友達になんてなれません。それに、フレディ様は貴族のご子息でしょう? 友人付き合いはお父様の許可もいるのではありませんか?」
エリシュカの弟である双子はそうだった。付き合う人間を父が選んでいて、学校もキンスキー伯爵家の財力では厳しい王都の学校へと入れたのだ。



