没落人生から脱出します!


「……結構な額を払ったんだ」
「あー、それは失敗でしたね。最初に相談に来ていただけたらよかったんですけど」

 ヴィクトルが同情交じりに相槌を打つ。リアンも、モーズレイ氏と魔道具を見比べながら答えた。

「これはたしかにうちの魔道具なんですが、もうずいぶん昔のもので、今は販売していません。おそらくは認可されていない中古店で買われたのだと思います。それでも、確認したところ、製品自体に問題はありません。おそらくあなたの魔力の火属性が強すぎて、暴発するのだと思います」

 魔力には個人差があり、属性がある。普通は、魔道具にまで影響することはないが、平均より強い力を持っている場合は、魔道具のカスタマイズが必要なのだ。

「本来は、買ったときにお伺いして調整するんです。だから魔道具店は顧客の登録をお願いしてますし、アフターケアもしています。中古店で買うよりも高いのは間違いありませんが、長い目で見れば、正規店で買う方がお得ですよ」
「そうか……」

 モーズレイ氏はがっくりと肩を落としていた。
 単純なエリシュカは彼が気の毒に思えてきた。さっきは怖かったけれど悪い人ではなさそうだ。

「中古店って取り締まることはできないんですか?」
「あまり治安のいい街じゃないからな。ひとつ取り締まったって、すぐに新しい店ができる。闇市もあるしな」
「でも、せっかく買って使えないのでは気の毒です」

 魔道具は高価だ。その購入費用を捻出するのも大変だったはずだ。
 没落後のキンスキー伯爵家の財政を管理していたから、エリシュカは余計同情してしまう。必死に目で訴えると、リアンは困ったように頭を掻きながら、提案してきた。