母親だって人間だ。感情がある。双子より好かれていないことくらい、肌で感じていて知っていた。そしてエリシュカは、自分が双子とは違い無邪気なだけの子供じゃないことも分かっている。母が、薄気味悪く思う部分は、確かにこの心の中にあるの。エリシュカは前世の記憶を持って生まれてしまったのだから。
仕方ないと思いながら、それでも母親に理解してもらえないのは、堪えようもなく悲しかった。
「俺は、お嬢のこと好きです」
「……リアン」
「大事です。だから泣かないで、お嬢」
リアンがギュッと抱きしめてくれた。リアンの肩がエリシュカの涙で濡れていく。それでも、リアンは背中をずっとさすってくれた。
「……ふえ」
エリシュカはまた泣きたくなる。でも今度は、さっきのとは少し違った。リアンの言葉がうれしくて、安心して泣きたくなったのだ。
* * *
「何事ですか?」
泣き声を聞きつけてきたサビナが、部屋に入ってくる。彼女は中の光景を見て、顔色を変えた。泣いているエリシュカを、リアンが抱きしめているのだ。幼い男女とはいえ、使用人のする行動ではない。
「リアン! お嬢様に何をしたの!」
リアンはエリシュカから引き離され、サビナに頬を強く叩かれた。女性の力にしては強く、リアンはバランスを失い、膝をつく。
それはあまりに一瞬の出来事で、エリシュカは呆然と倒れたリアンを見ていた。
「やめて! サビナ」
「使用人がお嬢様に何をしたの!」
リアンは黙っていた。弁明すれば、さっきの会話を聞いていたのがバレてしまう。エリシュカがそれを望んでいるとは思えなかったから、黙ることしかできなかったのだ。
そこに、エリシュカが割って入る。
「やめて、サビナ!……リアンは悪くない。怖い夢を見て泣いている私を、慰めてくれてたの」
リアンは驚いて顔を上げた。
この状況で、咄嗟に事実と違う言い訳を、五歳の子ができたことに違和感しかなかった。実際、八歳のリアンには思いつかなかったのだから。
仕方ないと思いながら、それでも母親に理解してもらえないのは、堪えようもなく悲しかった。
「俺は、お嬢のこと好きです」
「……リアン」
「大事です。だから泣かないで、お嬢」
リアンがギュッと抱きしめてくれた。リアンの肩がエリシュカの涙で濡れていく。それでも、リアンは背中をずっとさすってくれた。
「……ふえ」
エリシュカはまた泣きたくなる。でも今度は、さっきのとは少し違った。リアンの言葉がうれしくて、安心して泣きたくなったのだ。
* * *
「何事ですか?」
泣き声を聞きつけてきたサビナが、部屋に入ってくる。彼女は中の光景を見て、顔色を変えた。泣いているエリシュカを、リアンが抱きしめているのだ。幼い男女とはいえ、使用人のする行動ではない。
「リアン! お嬢様に何をしたの!」
リアンはエリシュカから引き離され、サビナに頬を強く叩かれた。女性の力にしては強く、リアンはバランスを失い、膝をつく。
それはあまりに一瞬の出来事で、エリシュカは呆然と倒れたリアンを見ていた。
「やめて! サビナ」
「使用人がお嬢様に何をしたの!」
リアンは黙っていた。弁明すれば、さっきの会話を聞いていたのがバレてしまう。エリシュカがそれを望んでいるとは思えなかったから、黙ることしかできなかったのだ。
そこに、エリシュカが割って入る。
「やめて、サビナ!……リアンは悪くない。怖い夢を見て泣いている私を、慰めてくれてたの」
リアンは驚いて顔を上げた。
この状況で、咄嗟に事実と違う言い訳を、五歳の子ができたことに違和感しかなかった。実際、八歳のリアンには思いつかなかったのだから。



