「いつも空想の話ばかり。お転婆だし、私の言うことなど聞きやしないのだもの」
「まあ奥様、エリシュカさまはあんなに愛らしいじゃありませんか。奥様そっくりの銀の髪も美しくて」
「やめてちょうだい」
母の冷たい言い方に、足がすくむ。エリシュカは思わず壁にくっついて身を隠した。
「お嬢?」
タイミング悪く、シーツをリネン室に戻してきたリアンが駆け寄ってくる。
呆然と口もとを押さえるエリシュカと共に、彼はキンスキー夫人の決定的なひと言を聞いてしまった。
「時々、ものすごく大人びたことを言うし、かと思えばひどく子供っぽい癇癪を起こすでしょう。私、あの子のことがよくわからないの。……あの子が自分の子だと思えないのよ」
リアンは、咄嗟にエリシュカの耳を塞いだ。
もちろん、それはすでに遅く、エリシュカは母の言葉を聞いてしまっていた。ボロボロと涙がこぼれてくるが、嗚咽を漏らさなかったのは、母に自分がここにいることを知られたくなかったからだ。
ただ黙って泣くエリシュカに、かける言葉が見つからず、リアンはしばらくオロオロしていたが、やがて、「部屋に戻りましょう、お嬢」と優しく耳元に語り掛けた。
エリシュカは頷き、手を引かれてお昼寝をしていた寝室へと戻る。
パタンとドアの閉まる音を聞いた途端に、我慢していた声が漏れた。
「う、うわあああん」
「お嬢、大丈夫ですよ。あんなの嘘です。聞き違いですよ」
「わああああん」
「まあ奥様、エリシュカさまはあんなに愛らしいじゃありませんか。奥様そっくりの銀の髪も美しくて」
「やめてちょうだい」
母の冷たい言い方に、足がすくむ。エリシュカは思わず壁にくっついて身を隠した。
「お嬢?」
タイミング悪く、シーツをリネン室に戻してきたリアンが駆け寄ってくる。
呆然と口もとを押さえるエリシュカと共に、彼はキンスキー夫人の決定的なひと言を聞いてしまった。
「時々、ものすごく大人びたことを言うし、かと思えばひどく子供っぽい癇癪を起こすでしょう。私、あの子のことがよくわからないの。……あの子が自分の子だと思えないのよ」
リアンは、咄嗟にエリシュカの耳を塞いだ。
もちろん、それはすでに遅く、エリシュカは母の言葉を聞いてしまっていた。ボロボロと涙がこぼれてくるが、嗚咽を漏らさなかったのは、母に自分がここにいることを知られたくなかったからだ。
ただ黙って泣くエリシュカに、かける言葉が見つからず、リアンはしばらくオロオロしていたが、やがて、「部屋に戻りましょう、お嬢」と優しく耳元に語り掛けた。
エリシュカは頷き、手を引かれてお昼寝をしていた寝室へと戻る。
パタンとドアの閉まる音を聞いた途端に、我慢していた声が漏れた。
「う、うわあああん」
「お嬢、大丈夫ですよ。あんなの嘘です。聞き違いですよ」
「わああああん」



