没落人生から脱出します!


 リアンに怒られると、リーディアは肩をすくめた。

「そうね。失礼しました。改めて自己紹介します。私はリーディエ・ジヴナー。『魔女の箒』の販売員です」

 ワンピースにジャケットを着こなしたリーディエは、仕事人らしく化粧もしっかり施されていて、大人っぽい。エリシュカは我に返って自分の身なりを見た。
 服こそちゃんと着ているものの、髪は寝起きのままでボサボサだし、顔も洗っていない。

「こんな格好ですみません。あの、昨日は自己紹介もせず失礼しました。私、エリシュカ・キンスキーです」

 慌てて頭を下げ、居心地の悪さを誤魔化そうと立ち上がった。

「リアンさん。私、これ片付けますね。他に、何か仕事はありませんか。叔父様が来るまでの間、私にも何か手伝わせてください」
「いいよ」
「でも」

 食い下がろうとするエリシュカの前に、リーディエが立ちふさがる。

「お客様にそんなことさせられませんわ。その洗い物も私がしますから、置いておいてくださいな」

 リーディエに悪気はないのかもしれないが、エリシュカは気持ちが沈んでしまう。役立たずだと言われたようだし、自分が邪魔者のような気もしてしまう。

「洗い物だけはします。……叔父様が来たら、教えてくださいね」

 少しばかりしょげつつ、エリシュカは自分の使ったお椀を流しに運んだ。