教会の鐘が、高らかに鳴り響く。

「いいね。素敵だ、エリシュカ」

 目を細めて頷くのは、ブレイクだ。視線は、白いドレスに施された刺繍飾りを向いている。

「叔父様は叔母様の刺した刺繍ばっかり見てるじゃないですか!」
「いやいや。さすがレオナは手先が器用だなって思って。君のこともちゃんと見ているよ。似合っている」
「もうっ。いいです。私もこの刺繍、とっても素敵だって思ってますから」

 レオナは、白いドレスの縁全体に、金糸と緑の糸でツタ模様を入れてくれた。キンスキー領の森林の緑を思わせる色で、エリシュカは一目見た瞬間に気に入った。

「ふふ。似合うわ。エリシュカちゃん」
「叔母様。本当にありがとうございます」

 レオナも、今日は見たことのない青いドレスを着ている。じっと見ていると、「ブレイクが買ってくれたのよ」とほほ笑んだ。

 レオナが目覚めてからというもの、ブレイクの彼女への溺愛は止まらない。

 そこへ、リアンがやってくる。

「なあ、これ本当におかしくないか?」

 フロックコートの胸もとを直しながら、着心地の悪そうな顔をしている。

「……着慣れないから、変な気分だ」
「とってもかっこいいです、リアン」

 エリシュカが満面の笑みを浮かべると、リアンは口もとを緩め、柔らかく笑った。

「エリシュカは似合うな。かわいい」
「……!」

 そんな直接的な褒め言葉がもらえるとは思わず、うれしさに微笑んでいるとと、生暖かい視線を感じた。

「お熱いことだねぇ」
「お、叔父様! からかわないでくださいっ」

 反論したエリシュカに、周囲からは笑い声が上がった。