屋敷を抜け出したエリシュカは、自領を出ることを最優先にした。
一番近い大きな街に出て乗合馬車に乗り、持っていた金銭で行けるところまで行く。
そしてたどり着いたのは、カレルという、キンスキー領の東隣の領地にあり、四方に街道がある大きな街だ。
(今日はここまでかな。まずは宝石を売って宿代を作らなきゃ)
朝早く出たのに、もうすぐ陽が落ちてしまう。
エリシュカは街を走り回り、質屋の看板を見つけて飛び込んだ。
「あの、これ、いくらになりますか?」
「ああ? お嬢さん、家出かね」
白髪交じりの店主にそう言われ、エリシュカは驚き、一歩後ずさる。
「どうして?」
「おまえさんくらいの年で宝石を売るやつは、盗人か家出人と相場が決まっている。あんたは手が綺麗だからな、盗人ではなさそうだ」
エリシュカは自分の手を見る。これでも、事業が傾きだした五年前からは、使用人がやるような仕事もしてきたのだ。自分では働いている手だと思っていたが、街の人には、これは労働を知らない手に見えるらしい。
悔しくなって唇を噛みしめる。すると店主はカラカラと笑った。
「素直なお子じゃな。わしは悪いなんて言っとらんぞ。そう人にあっさりと表情を読まれていては、悪い奴に付け込まれるぞ」
「うっ……」
たしかにその通りだ。例えばこの店主に相場より安い値段をつけられても、エリシュカには分からない。自分が世間知らずだと分かるような態度は、自分の首を絞めることになるのだ。
「おじいさんは私を騙す?」
尋ねると、店主は困ったような顔をした。
「そう聞くか。困ったのう。そう言われたら騙すわけにもいかんな」
店主は差し出された宝石を検分し、金額を提示してきた。でもそれが、何日生活できる金額なのかエリシュカはわからなかった。
店主は口もとだけ緩め、諭すように言った。
一番近い大きな街に出て乗合馬車に乗り、持っていた金銭で行けるところまで行く。
そしてたどり着いたのは、カレルという、キンスキー領の東隣の領地にあり、四方に街道がある大きな街だ。
(今日はここまでかな。まずは宝石を売って宿代を作らなきゃ)
朝早く出たのに、もうすぐ陽が落ちてしまう。
エリシュカは街を走り回り、質屋の看板を見つけて飛び込んだ。
「あの、これ、いくらになりますか?」
「ああ? お嬢さん、家出かね」
白髪交じりの店主にそう言われ、エリシュカは驚き、一歩後ずさる。
「どうして?」
「おまえさんくらいの年で宝石を売るやつは、盗人か家出人と相場が決まっている。あんたは手が綺麗だからな、盗人ではなさそうだ」
エリシュカは自分の手を見る。これでも、事業が傾きだした五年前からは、使用人がやるような仕事もしてきたのだ。自分では働いている手だと思っていたが、街の人には、これは労働を知らない手に見えるらしい。
悔しくなって唇を噛みしめる。すると店主はカラカラと笑った。
「素直なお子じゃな。わしは悪いなんて言っとらんぞ。そう人にあっさりと表情を読まれていては、悪い奴に付け込まれるぞ」
「うっ……」
たしかにその通りだ。例えばこの店主に相場より安い値段をつけられても、エリシュカには分からない。自分が世間知らずだと分かるような態度は、自分の首を絞めることになるのだ。
「おじいさんは私を騙す?」
尋ねると、店主は困ったような顔をした。
「そう聞くか。困ったのう。そう言われたら騙すわけにもいかんな」
店主は差し出された宝石を検分し、金額を提示してきた。でもそれが、何日生活できる金額なのかエリシュカはわからなかった。
店主は口もとだけ緩め、諭すように言った。



