没落人生から脱出します!

「こ、このリアンという男は、もとは我が屋敷の使用人の息子です。そんな男が……」
「だが、レイトン商会は貴殿が山林を売ったところだろう? 過去はどうであれ、今のこの男の立場がそう悪いものだとは思えないが」
「それは、そのっ」
「キンスキー伯爵、ここまでのやり取りでもうわかっただろう。貴殿は論理的に物事を考えられないほど疲れているのだ。早く跡目を娘に譲り、隠居して静養するがいい」
「へ、陛下。私は」
「必要な書類は用意してある。後は、貴殿が署名するだけだ」

 そこでようやく、キンスキー伯爵はこれがすべて事前におぜん立てされていたことだと気づいた。

「エリシュカ、お前っ。どうやって陛下をだました? こんなだいそれたことをする娘に育てた覚えはない」
「兄上、そろそろお黙りください。耳が腐りそうですし、リアンの我慢も限界にきてそうですから」

 エリシュカをかばうように手を広げているリアンは、怒りで細かに震えていた。

「御前で睨み合うな! キンスキー伯爵とエリシュカ嬢と婚約者のリアンは、後ほど執務室に来るように。謁見は終わりだ。皆、下がりたまえ」

 宰相が高らかに叫び、伯爵が暴走しないようにと、それぞれ近衛兵に案内され、別々の客室まで戻った。