「これはもう、早々に代替わりをした方が領地のためだろう。しかし、そなたの息子らはまだ学生だ。とても領地運営を担えるとは思えない。そこで、私はここにいるエリシュカ・キンスキー嬢に家督を渡すよう命ずるつもりだ」
「は?」
思わず声を出してしまったのはエリシュカだ。
「えっ、私……ですか?」
「そうだ。君はキンスキー伯爵家の長女であり、領民からの信頼も厚いと聞いている。レイトン商会での仕事ぶりを聞くに、領地運営についても力をつくしてくれよう」
国王に微笑まれ、エリシュカは言葉をなくす。
「お、お待ちください陛下。娘に家督を継がすなど……。先祖代々、男子が家督を継ぐものと決まっているではありませんか」
「適任者がいない場合は、娘に婿をもらって継がせることはよくある。その場合は、娘の代は繋ぎという形にはなるが、彼女が男子を産めば、正式な後継者として認められるはずだ。エリシュカ嬢は結婚間近と聞いておるぞ。そこにいるレイトン商会の商会長だろう? 経営の才覚はある。申し分ないだろう」
「リアンに家督を渡すなど冗談じゃない。私は、反対です」
怒鳴るような強い声を出し、キンスキー伯爵は周囲の人間すべてから眉を顰められた。
「……なぜ反対なのだ?」
重苦しい沈黙の後、言葉を発したのは国王だ。



