没落人生から脱出します!

 エリシュカは緊張していた。
 王都も初めてなら、登城するのも初めてである。社交界デビューをしていない身なので、王族の前に出るときの訓練もしていない。礼儀作法の本を買って勉強はしてみたが、失敗しそうで気が気ではない。

(お初にお目にかかりますって言って、名乗ればいいんだよね)

 見上げれば横に立つリアンも、緊張で顔がこわばっている。じっと見ていたら、彼は硬い表情のままこちらを気遣ってくれる。

「エリシュカは大丈夫か?」
「なんとか……。リアンはどうですか?」
「お貴族様くらいは平気だが。さすがに国王陛下となるとな……」

 こめかみのあたりが引くついていて、緊張しているのが見て取れた。普段は誰相手でも物怖じしない彼のそんな姿は珍しい。

「ふふ。緊張しているリアンを見ていたら、ちょっとほぐれてきました」
「なんだと?」
「私だけじゃないって思ったんですよー!」

 リアンになら、睨まれても怖くない。笑ったら緊張がほどけてきた。

「はいはい、ふたりともじゃれつくのはそのあたりまで。そろそろ呼ばれるよ」
「はいっ」

 エリシュカはみんなに倣って、頭を下げる。
 文官が、来訪者の名前を滔々と告げる。そこに自分の名前を聞いて、緊張が高まって来た。

「行くよ」

 ブレイクの小声が聞こえたかと思うと、彼が前へと動く。続いてレオナ、リアン、エリシュカの順だ。顔をうつむかせたまま歩くので、国王の顔は見えない。赤いじゅうたん。豪華な刺繍の入ったズボンの裾が、かろうじて視界の端に入る。