翌朝、セナフル邸での朝食には、リアンとモーズレイも訪れていた。
 リアンとは昨日以来だったが、人前ということもあり、「体調は大丈夫か」という問いに頷く程度の会話しかしていない。

「じゃあ、一時間後、打ち合わせをするから」

 ブレイクはそう言い、レオナの様子を見に二階へと行ってしまった。
 残った三人はお茶を飲みながら歓談だ。

「しかし、俺がここに居ていいのかぁ。アンタが少年じゃなくて嬢ちゃんだってことにもびっくりしたが、伯爵様の娘だったなんてなぁ」

 モーズレイが、エリシュカをまじまじと眺める。キンスキー邸で、モーズレイが動揺しないように、リアンとブレイクが最初から教えておいてくれたらしい。

「騙していてごめんなさい。あの時は家出中だったもので、変装していたんです」
「お貴族様にもいろいろあるんだな。まあ俺は、職なしの状態から、いきなり経営者として雇ってもらえてラッキーだったけど」
「言っておくけど、その分の働きはしてもらうからな」

 腕を組んだまま、リアンがモーズレイを軽く睨む。
 リアンいわく、モーズレイのそのガタイの良さと、腹の底から出る大声は、人から舐められず適度に威圧ができていいのだという。まだまだ若いリアンではその風格が出ないし、ブレイクも基本人当たりが柔らかいので、そのあたりは向いていないのだ。
 モーズレイにとっても条件がいいから問題ないが、相変わらず正しい説明も聞かないまま、いいように使われているモーズレイが、エリシュカとしては心配になる。