「私だって、ずっと好きなんですからっ。勝手にいじけないでください。敬語は癖だし、リーディエさんもヴィクトルさんも仲間ですもん! でも私が、一番頼りにしていたのは……」

 〝いつだって、リアンだった〟

 その言葉は、塞がれた唇に飲み込まれた。
 離れる瞬間の、リアンの瞳が切なげで、エリシュカは恥ずかしさと心臓のドキドキといろいろなものが交ざり交ざって、膝から力が抜けてきた。

「……も、キャパオーバーですぅ」
「エリシュカ!」

 そのまま再び腕の中に抱きしめられ、エリシュカは意識を失った。


 目覚めたときにはベッドに寝かされていて、傍についていたのはブレイクに代わっていた。

「暴走しすぎたって、謝ってたよ、リアン」
「そ、そうですか」
「まあでも、君が兄上に連れ去られてからのリアンを見ていたら、許してやって欲しいとしか言えないかな」

 ブレイクから聞かされた内容によると、リアンはエリシュカが攫われてから、もっと速く行動に移すべきだったと、ずっと後悔していたらしい。
 中一日で、取り戻すための計画書を作り出し、ブレイクに協力を仰いできたかと思えば、モーズレイまでも仲間に引き入れてきた。
 それでも起業のための司法手続きにはそれなりに時間がかかり、やきもきしながら〝コタツ〟を作っていたのだそうだ。

「プロポーズするときは、これを作るつもりだったんだって」
「ええっ」

 じゃあやっぱり、今日の一連の告白はプロポーズだと認識していいのだろうか。
 うれしいけれど、エリシュカとて初恋がリアンなのだ。恋愛さえ初心者なのに、ここからどう対応したらいいのか分からない。

「リアンは口下手だけど、君のことは本気で好きなんじゃないかな。僕のところに弟子入りしたのも、君の言ってた魔道具を作ってあげたかったらしいし。両親が死んで、せっかく入った孤児院も抜け出して……。まあ昔から、思い込んだら行動力はある男だよね、リアンは」

 そんなことを聞いてしまったら、顔が熱くて仕方がない。

「君が嫌じゃなければ、リアンはお勧めだよ」

 そうにっこり微笑んで、ブレイクが出て行った。
 エリシュカは熱の引かない頬を押さえながら、突然訪れた幸福に身をよじるしかなかった。