* * *
マクシムとラドミールが王都に戻り、キンスキー伯爵家に束の間の静けさが舞い降りる。
輿入れ準備は母が中心となってやっているので、エリシュカはすることもなく庭を散歩していた。
広い庭園には木々がいっぱいある。林業はキンスキー伯爵家の主力事業だった。その売り上げが落ち、エリシュカには借金返済のための婚姻が求められたのだ。
(事業がうまくいっていれば、少しは違ったのかな)
そう考えて、首を振る。それはきっと、きっかけに過ぎない。もし、金銭的に問題なかったとしても、エリシュカは伯爵家にとって有利な相手に嫁がされただろう。
父や弟たちの考えを理解するのに、ちょうどいい機会だったのだ。エリシュカが家族だと思っていても、彼らはエリシュカのことを所有物としか思っていない。それがこの世界の貴族の常識だというのなら、きっとおかしいのはエリシュカの方なのだ。
(……ああ、どうして前世の記憶なんてあるんだろう。だからきっと辛いんだわ)
それでも、前世の記憶がなければ、リアンやリーディエやヴィクトルがこんな風に身近な存在になることはなかっただろう。生まれた時からある記憶なのだから、前世を含めてエリシュカだ。
(疲れた……)
敷地の一番端まで来て、エリシュカは、樹齢二百年は経っていると言われている太い幹に背中を預けて座り込んだ。
マクシムとラドミールが王都に戻り、キンスキー伯爵家に束の間の静けさが舞い降りる。
輿入れ準備は母が中心となってやっているので、エリシュカはすることもなく庭を散歩していた。
広い庭園には木々がいっぱいある。林業はキンスキー伯爵家の主力事業だった。その売り上げが落ち、エリシュカには借金返済のための婚姻が求められたのだ。
(事業がうまくいっていれば、少しは違ったのかな)
そう考えて、首を振る。それはきっと、きっかけに過ぎない。もし、金銭的に問題なかったとしても、エリシュカは伯爵家にとって有利な相手に嫁がされただろう。
父や弟たちの考えを理解するのに、ちょうどいい機会だったのだ。エリシュカが家族だと思っていても、彼らはエリシュカのことを所有物としか思っていない。それがこの世界の貴族の常識だというのなら、きっとおかしいのはエリシュカの方なのだ。
(……ああ、どうして前世の記憶なんてあるんだろう。だからきっと辛いんだわ)
それでも、前世の記憶がなければ、リアンやリーディエやヴィクトルがこんな風に身近な存在になることはなかっただろう。生まれた時からある記憶なのだから、前世を含めてエリシュカだ。
(疲れた……)
敷地の一番端まで来て、エリシュカは、樹齢二百年は経っていると言われている太い幹に背中を預けて座り込んだ。



