没落人生から脱出します!

 やけっぱちな気分でそんなことを考えていると、マクシムとラドミールは、両側から嫁入り先であるバルウィーン男爵の人柄を切々と語り始める。
 いくら人柄がよくとも、十七歳を後妻に求める四十四歳に心を許す気にはならない。エリシュカは、ふたりを押しのけるようにして歩き、部屋へと閉じこもった。
 出て行ったときとそう変わらない部屋で、ポツンと佇んでいると、不意に心細くなってくる。

「……ただいまって気分にはならないものね」

 心を許せる相手がいない屋敷は、どれほど広く、豪華であろうとも、寂しい。心にぽっかり穴が開いたようだ。

「子ネズミ、置いてきちゃったな」

 あの日、エリシュカの背中を押してくれた魔道具も、今はもう無い。
 これまで我慢できていたのに、急に涙が目に浮かんでくる。

「大事なものだったのにな……」

 無性に悲しくて、エリシュカはしばらく大きな声で泣いた。


 翌日からは、エリシュカの輿入れの準備が始まった。
エリシュカは、朝食を終えるとすぐに一室に閉じ込められ、出入りする仕立て師に採寸されたり、母親が布地サンプルに是非を伝えるのを見たりしていた。
 エリシュカが家出中に、バルウィーン男爵から届いたという手紙も見せられた。

 【体調が優れないと聞いておりますがいかがですか。私は息子に家督を譲り、隠居する身ですので、屋敷でのんびり暮らしましょう。可愛らしいお嬢さんをお迎えできる日を楽しみにしています】

 手紙の感じで言えば、悪い人ではなさそうだ。ただ、十七歳の初婚の娘を隠居する際の相手に選ぶというとことに気持ち悪さを感じてしまう。