エリシュカが、セナフル邸に行ってから一週間が経つ。その間、二日に一度の頻度で、双子が『魔女の箒』へと押しかけている。

「ねーリアン。いい加減姉上に会わせてくれない?」
「しつこいですね。ここにはエリシュカお嬢様はいませんって。それより、坊ちゃん方は暇なんですか? 学校はどうされたんです?」

 『魔女の箒』のカウンターで、リアンは不愉快ながらも双子の相手をしていた。ヴィクトルやリーディエにさせるわけにはいかないし、一応貴族である彼らを追い返すわけにもいかない。

「テスト後の長期休暇だよ。キンスキー領に帰ってきたら姉上がいないって聞かされて。驚いて俺たち、心当たりを捜してるんだ」

 そう答えるのはラドミールだ。

「もっと他に探すところがあるでしょう? 友人とかは?」
「姉上には友人はいません。リアンも知っているでしょう? 姉上には虚言癖がある。だから母上は姉上を外に出したがらなかったんです。初等学校を卒業した後は、ずっと屋敷にいたんですよ。貴族としては教育が足りていませんから、姉上には嫁に行くくらいしか将来がないんですよ。なのに……逃げ出すなんて」
「……なんだって?」

 マクシムの発言は聞き捨てならないものだ。
 リアンの目から見ても、エリシュカは学習意欲のある人間だ。素直に人の意見を聞き、自分の間違いもすぐ認める。与えれば与えるだけ知識を吸収するタイプの人間だ。