没落人生から脱出します!


 貴族の血筋で、魔力が豊富なはずのブレイクが、いつも魔力不足だという言葉の裏には、こんな事実があったのだ。
「そんな事情があったなんて、知りませんでした。……父のせいで、叔父様は苦労したんですね。ごめんなさい」
「どうして謝る? 兄上には失望したけれど、君からは希望をもらった。僕は君に感謝しているんだ」
「でも、……でも、あの頃の伯爵家にはちゃんとお金があったはずです。叔父様は家族なのに、どうしてお父様は叔父様を助けてあげなかったの……!」

 エリシュカは悲しかった。弟の妻が病気で、助けを求めているのに、金の出し惜しみをするような父が。
 ベッドに近寄り、エレナを見つめる。色が白く、体の細い人だ。目を閉じているから瞳の色は分からないが、髪は綺麗な金髪だ。胸が上下しているところを見ると、ちゃんと呼吸はしているらしい。

「エレナさんがこんな風に寝たきりになった一因は、お父様にもあるんじゃないでしょうか。最初にお父様が援助していれば、ここまで悪化することなんてなかったんじゃ……」

 目尻に涙が浮かんでくる。でも泣いてしまっては、ブレイクはエリシュカを許さなければいけないなると思い、必死にこらえた。

「……エレナの病気と兄上とは直接関係がないよ。援助してもらえなかったのはたしかにつらかったが、僕は今、仕返しをしているしね」
「え?」
「伯爵家の借金の肩代わりくらいは、今の僕なら造作もなくできるんだ。だけど、あのとき助けてくれなかった人を助ける義理はないと思って、追い返している。だからもし、エリシュカが兄上に見つかって無理やり連れ去られそうになったら。僕が助けてあげる。君は僕にとって助ける価値がある人間だからね。頼ってくれたら、僕はうれしいよ?」
「叔父様……」
「君も、リアンも。僕がレオナを救うためには欠かせなかった人材なんだ。リアンがいてくれなければ、ここまでの財は築けなかったし、毎日妻の傍にいることもできなかった。感謝してるよ」
「……そうなんですね」