没落人生から脱出します!

 ブレイクは苦笑すると、エリシュカの手を引いて、同じ階にある奥の部屋へと連れてきた。

「僕の奥さんはここにいる。名前はレオナ。綺麗な人だよ」
 彼が招いてくれた部屋は寝室だった。大きな天蓋付きのベッドには横たわった人影が見える。
「お休み中でしたら……」
「目覚めるのを待っていたら、一週間はレオナに会えないよ」

 さらりとほほ笑んでいったブレイクを、エリシュカは二度見した。
 ブレイクに手を引かれて近づくと、そこにはウェーブの金髪の美しい女性が眠っていた。人形と言われても納得するほどの、完璧な美を誇っている。かすかに上下する胸で、彼女が生きているのは確認できた。
 エリシュカよりは年上だろうが、二十代の前半位にみえる。ブレイクが三十三歳ということを考えると、夫婦というよりは兄妹のような年齢差だ。

「若く見えるだろう? だがレオナは今年三十歳になる。フレディ君と同じ、魔力欠乏症なんだ。と言っても生まれつきではなく、彼女は十三年前、突然この症状に襲われた。結婚して、まだ一年経たないころだ。当時治療法はなく、いろいろな医療や魔術を試すしかなかった。僕が、……君が幼い頃、キンスキー伯爵家を訪れたのも、治療のための金を借りるためだった。……兄上にはあっさりと断られたけどね」
「そんな」

 衝撃だった。まさか、ブレイクの妻がそんなことになっていたなんて。しかも、経済援助を断ったなんて。あの頃のキンスキー伯爵家にはお金があったはずなのに。
 エリシュカの動揺が伝わったのか、ブレイクは彼女の肩をポンと叩き苦笑する。

「気にしないで。僕は君に感謝している。小さかったエリシュカの言葉にヒントを得た魔道具で大当たりしたし、自分の魔力を彼女に注げばいいってことも思いついたんだ。大陸の方には、身体機能を補助する魔道具はいくつかあるから、それを取り寄せて研究して、魔力欠乏症の人に、他人の魔力を適合させるための魔道具を作成した。もちろん、時間もお金もかかったけれど」