没落人生から脱出します!

(……あれ、そういえば)

「叔父……ブレイク様。奥方様はどちらにいらっしゃいますか? ご挨拶したいのですが」
「ああ、妻ね。あとで紹介するよ。まずは君の部屋に案内しよう」

 何よりも先に奥様にご挨拶がしたいのに、ブレイクはエリシュカをグイグイと引っ張っていく。
 連れてこられたのは、二階の日当たりのいい部屋だ。中を見れば、大きなベッドに小さな机。窓には新しそうなクリーム色のカーテンがつけられている。

「こんないいお部屋! いいんですか?」
「僕の大事なエリシュカの部屋だからね」

 呼び名が変わったことに気づいて、辺りを見回す。ブレイクが一緒にいるからか使用人は誰もついてきていなかった。
 ここぞとばかりにエリシュカはブレイクに苦言を呈する。

「叔父様。やりすぎです。私のこと、奥様になんて説明しているんですか? ただの使用人にここまで気を使っていては怪しまれますよ」
「大丈夫だよ。君が僕の姪なのは事実なわけだし。屋敷の者に隠しているのも、兄上が来たときにバレないようにするためだし」

 ブレイクはどこまでもあっけらかんとしている。

(男の人って……鈍感!)

 エリシュカは内心イライラしてきた。これではダメだ。なんとかして、ただの従業員ですアピールをしなければ、ブレイクの奥様の心を傷つけてしまう。

「それより、お部屋はもういいです。奥様に紹介して下さい!」
「ああ。……そうだなぁ。ごまかすのもそろそろ限界かぁ」