「リアンさん」
「……連れ戻されて、望まない結婚などさせられたくないだろう?」
それはそうだ。でもここを出れば、リアンとは会えなくなってしまう。エリシュカはそれも嫌だった。
「私、このお店が好きです。ずっと働いていたいのに……」
「今だけだ。何度来てもエリシュカがいなければ、彼らも諦めるだろう?」
「それは……」
これ以上、エリシュカもわがままは言えない。リアンはエリシュカの安全を考えてくれているのだ。
「分かりました。行きます。でもリアンさん、たまには……会いに来てくれますか?」
リアンの腕を握り、絞り出すようにわがままを言う。しばらくの沈黙に、リアンを怒らせてしまったかと不安になって顔を上げた。
「……分かった」
リアンは頬を染めたまま、ポンとエリシュカの頭を軽く叩く。
(照れてる?)
彼の顔を見て、エリシュカは少し安堵する。
(たしかに、リアンさんを直接見ていれば、嫌われてはいないと思える)
リアンは優しい人だ。きっと、父とエリシュカは別の人間だと、切り分けて考えてくれているのだろう。
(でも、私は父がリアンさんから奪ったものを、いつか返さなきゃ)
縁を切るつもりで出てきたけれど、血縁関係は消えない。伯爵家が苦労することは自業自得だと思えるけれど、彼らによって搾取された人間たちのことが自分には少しも責任がないとは、エリシュカには思えなかった。
(いつか……どういう形で返せるか分からないけれど)
自分に関心がなく、道具のように利用され、愛想をつかして出てきたはずだ。それでも、悲しいことにやはり、彼らはエリシュカにとって家族だった。
エリシュカはリアンに言われるがまま鞄に荷物を詰め込み、
突然いなくなる迷惑を、ヴィクトルやリーディエに謝ったが、「エリシュカのせいじゃないじゃん」とあっけらかんと言われてしまう。
「行っておいで。帰りを待ってる」
「そうよ。帰ってきたらじゃんじゃん働いてもらうから」
ふたりの言葉に励まされ、エリシュカは迎えに来たセナフル家の馬車に乗り込み、『魔女の箒』を後にしたのだ。
「……連れ戻されて、望まない結婚などさせられたくないだろう?」
それはそうだ。でもここを出れば、リアンとは会えなくなってしまう。エリシュカはそれも嫌だった。
「私、このお店が好きです。ずっと働いていたいのに……」
「今だけだ。何度来てもエリシュカがいなければ、彼らも諦めるだろう?」
「それは……」
これ以上、エリシュカもわがままは言えない。リアンはエリシュカの安全を考えてくれているのだ。
「分かりました。行きます。でもリアンさん、たまには……会いに来てくれますか?」
リアンの腕を握り、絞り出すようにわがままを言う。しばらくの沈黙に、リアンを怒らせてしまったかと不安になって顔を上げた。
「……分かった」
リアンは頬を染めたまま、ポンとエリシュカの頭を軽く叩く。
(照れてる?)
彼の顔を見て、エリシュカは少し安堵する。
(たしかに、リアンさんを直接見ていれば、嫌われてはいないと思える)
リアンは優しい人だ。きっと、父とエリシュカは別の人間だと、切り分けて考えてくれているのだろう。
(でも、私は父がリアンさんから奪ったものを、いつか返さなきゃ)
縁を切るつもりで出てきたけれど、血縁関係は消えない。伯爵家が苦労することは自業自得だと思えるけれど、彼らによって搾取された人間たちのことが自分には少しも責任がないとは、エリシュカには思えなかった。
(いつか……どういう形で返せるか分からないけれど)
自分に関心がなく、道具のように利用され、愛想をつかして出てきたはずだ。それでも、悲しいことにやはり、彼らはエリシュカにとって家族だった。
エリシュカはリアンに言われるがまま鞄に荷物を詰め込み、
突然いなくなる迷惑を、ヴィクトルやリーディエに謝ったが、「エリシュカのせいじゃないじゃん」とあっけらかんと言われてしまう。
「行っておいで。帰りを待ってる」
「そうよ。帰ってきたらじゃんじゃん働いてもらうから」
ふたりの言葉に励まされ、エリシュカは迎えに来たセナフル家の馬車に乗り込み、『魔女の箒』を後にしたのだ。



