没落人生から脱出します!

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「リアンさんとうちの双子が険悪だったのが、気になるんです」

 エリシュカは、七歳のときに池に落ちたショックで、それ以前の記憶がない。だから、リアンがキンスキー伯爵邸に勤めていた使用人の子供だというのも、本人から聞かされて知ったくらいだ。

「追い出されたって……言ってましたけれど。それはどうしてなんでしょう」

 エリシュカは不安な気持ちを隠せないまま、すがるようにふたりを見上げる。
 ふたりは気まずそうに目配せし、「俺たちの知っていることは少ないけど」と前置きしてヴィクトルが話し始めた。

「リアンは、池に落ちた令嬢──これは多分君のことだと思うけど──を助けたんだ。だけど、伯爵家の奥方に、お前のせいで娘は池に落ちたと言われて、家族ともども追い出されたんだって。それからは、伯爵が裏で手をまわしたのか、どこの屋敷でも雇ってもらえなくて大変だったみたいだよ」
「ちょっと、ヴィクトルさん」
「こんなの、誤魔化したってしょうがないだろ。エリシュカが知りたいんなら教えるべきだ」
「店長は隠したがっていたじゃない」

 リーディエとヴィクトルが言い合いを始める。どうやら、ふたりとも、エリシュカが〝リアンが伯爵家を追い出されるきっかけとなった令嬢〟だということは知っていたようだ。

「私のせい……だったんですか」

 ここにきてはじめてリアンと話したときの、彼の驚きの表情を思い出す。今から考えれば、ムッとしていたような気もする。あれは、自分を陥れたエリシュカが、のんきにやってきたことへのいら立ちだったのだとしたら……。