没落人生から脱出します!

 ふたりの声に、エリシュカは驚く。
 たしかにフレディは王都の学校に通うと言っていた。そこで、双子と友人にでもなったのだろうか。あの人懐っこく、おしゃべりなフレディのことだ。この店のこともエリクのことも、洗いざらい話してしまうだろう。

(じゃあ、双子がここに来たのって偶然じゃないの?)

 なお焦りながら、エリシュカはかつらを押さえる。正体がバレたら、伯爵邸に連れていかれる。そんなのは絶対に嫌だ。

「これは、マクシム様とラドミール様、お久しぶりです。幼い頃にいっときだけ仕えていた使用人のことを覚えていてくださるとは」

 リアンがぺこりと頭を下げる。
「リアン、知り合い?」と小声で問いかけるヴィクトルの声が聞こえてきた。
 マクシムとラドミールは、ニヤニヤと笑ながらリアンを見上げる。

「あたり前だろ。お前はあんなことをして追い出された使用人だからなぁ」

(あんなこと?)

 エリシュカの頭がツキンと痛む。ラドミールが言っているのは、おそらく記憶のない七歳以前のことだ。

(追い出されたってどういうこと? たしかに昔、リアンさんは伯爵邸で勤めてたって言ってたけど。リアンさんの一家は自分たちの都合で辞めたんじゃなくて、辞めさせられたの?)

「こんなところで働いてるなんてビックリだな。なぁ、マクシム」
「……ええ。父上の話では、あなた方は路頭に迷って死んだだろうって聞いてましたけどね」

 双子の口から飛び出すのは、不穏な言葉ばかりだ。エリシュカはウズウズする。リアンを傷つけようとするその口を縫い付けたい。
 しかし、踏み出そうとした足は、続くマクシムの言葉で止まった。