目を開けると、エリシュカは自分の部屋にいた。

「あれぇ」

 ヴィクトルの魔石が見つかって、彼の家族の話を聞いたところまでは覚えている。けれどそこからの記憶は曖昧だ。ヴィクトルに余計なことを言ってしまったかもしれないと不安になりつつ、エリシュカは部屋を出た。

「おはよう」

 廊下にはリアンがいた。やや不機嫌そうにじっと見つめられて、エリシュカは焦る。

「おはようございます! リアン、私昨日、どうやって帰ってきたんでしたっけ」
「……ヴィクトルが連れて帰ってきた」
「うわぁ、やっぱり。ベッドまで運んでくれたのはリアンですか? すみません、面倒かけて」

 アワアワしながら言うと、リアンは真顔で首を振る。

「面倒ではない。ただ、いくら男の姿をしてても、夜は気をつけろ。治安のいい街ではないからな。無防備が過ぎるんだよ」
「はい」

 また言われてしまった。たしかに男性を前に意識を失うのは無防備だろうが、相手がヴィクトルなのだから危険なことはないと思うのだが。
 とはいえ、心配してくれているのは分かるので、素直に頷くことにする。
 リアンが朝食を作っている間、エリシュカは身支度を整える。そして一緒に食卓に着く。ふたりのいつもの生活パターンだ。

「そう言えば、リアンさんは、昨日叔父様と何をしていたのですか?」

 ブレイクに呼び出されて、夕飯までには帰れないと言っていたはずだ。

「ああ。魔道具の改良の話をしていた。デルタ鉱山で取れる魔石に、少し変わってモノがあるらしくて。モーズレイ氏の予定も空いていたから、今日採掘に向かう。留守にするが頼むな」
「そうなんですね。気を付けてきてください!」