没落人生から脱出します!

 自分とは違う歩幅は、見せる景色を少し変える。揺られていると眠くなってしまう。しかし、ヴィクトルにそんな気の抜けた場面を見せるわけにはいかない。

「さっきの画像、エリシュカも見えたんだろ?」
「はい」
「あれ、うちの家族。あの魔石はさ、兄貴の形見なんだ」

 ぽつりと、ヴィクトルがつぶやいた。

「形見?」
「そう。八年間に亡くなったんだ。兄貴は当時二十三歳だった」

 そんなに若いうちに亡くなるなんて……とエリシュカが思っていると、ヴィクトルが続ける。

「貧乏なうちって、なぜか兄弟が多いんだよね。うちは兄貴、俺、弟、双子の妹の兄弟だった。親が必死に働いたって、五人を養うのは大変だろう。兄貴だけ年が離れていたってのもあって、兄貴はガキのころから働いていた。俺たちを養うために」

 平民の暮らしを、エリシュカは言うほどわかっているわけではない。だけど、面倒を見るものが多ければ多いほど、生活が大変なのはわかる。

「幸い、兄貴は魔力が多くて、貴族の屋敷で、高値で雇ってもらえてた。兄貴、給料日には、俺たちが食べたことないようなお菓子を買ってくるんだ。土産って言ってさ。俺たちはその日が楽しみで、兄貴の帰りを外に出て待ってた。金の価値がわかるようになってからは、もっと他のことに使えばいいのにって思っていたけど、今考えれば、兄貴は菓子に金を払っていたんじゃないんだよな。俺たちの笑顔に払ってたんだ」