没落人生から脱出します!

「でも、ここまでお人よしだと、なんかもうどうでもよくなってきたな。平民側の都合とか、貴族の立場とか、君、お構いなしだもんな」
「……その言い方だと、私が凄い自分勝手な人間みたいじゃないですか」
「勝手じゃん。結婚が嫌で逃げてきたんでしょ? そりゃ可哀想だなって思うけど、貴族ってそういうものじゃないの」
「うっ……」

 たしかにそうだ。言い返せない。積もり積もった不満があったからこそ、家を出てきたわけだが、確かに貴族として生まれた以上、家のための結婚には同意するのが貴族の常識だ。
 リーディエにも言われたが、エリシュカには覚悟が足りないと言われればそうなのだろう。

「……結局私、平民としても貴族としても中途半端なんですね」
「ようやくわかった?」
「はい」

 しゅん、として言うと、ヴィクトルは突然噴き出した。

「はは。やっぱりエリシュカは変だ。素直すぎる。リアンが放っておけずにいるのも分かるような気がするよ」
「私、どうすればいいんでしょう。みんなに迷惑をかけてますか?」

 自分の根底を否定されたような気持ちで、エリシュカがしょげ捲ると、ヴィクトルは苦笑して彼女の頭を撫でた。

「迷惑ではないよ。困惑はしてるけど。……でも、君のおかげでリーディエは救われたんじゃん? だから君は君のままでいいんだと思う。俺たちに、君を守る覚悟が足りなかっただけ」
「え?」
「君が君のままでいて欲しい人間は、この街で君が傷つかないように守ろうとするんじゃない? 少なくとも、リアンには最初からその覚悟があって、リーディエももうあるんじゃないかな。俺は、……まあ、自分に被害が及ばなきゃいいよって程度だけど。君のことは嫌いじゃないしね」

 すごく遠回しな言い方で、エリシュカにはいまいち理解できない。

(でも、嫌われてはいない?)

 じっと見つめていると、ヴィクトルは吹っ切れたようにほほ笑んだ。

「ごちそう様。うまい串焼きだった。得したな。──さ、悪いけどエリシュカ、魔石探しにつき合ってくれる?」
「は、はい!」

 よくわからないけれど、魔石探しは一緒にやってもいいらしい。
 エリシュカは、首が取れそうな勢いでぶんぶんと頷いた。