「やっぱりエリシュカは変わっているよね。もうはっきり言っちゃうけどさ。暗くなってから男とふたりになるのって、襲ってくれって言っているようなものだし、なにを落としたのか聞いてきたけど、普通なら教えないんだよ。見つかったら盗られてしまうからさ」
「え?」
「それがこの街の普通なんだ。金目のものは見つけたもの勝ち。落とした奴が馬鹿なんだ。……エリシュカには思いもしなかったことだろう?」
呆然としているエリシュカに、ヴィクトルは目を伏せる。たしかに、治安のよくない街だとは思っていたが、予想以上だった。エリシュカの常識では、他人のものは他人のものだ。落とし物ならば、捜して持ち主に返すのが正しいことだと信じて疑っていなかった。
「正直、君は平民にはなり切れないと思う。良くも悪くも、お嬢様なんだよ。だから俺は、君に対する態度を決めかねているんだ。君はオーナーの姪だ。愛想よくしておくに越したことはない。だけど時々無性にイライラするんだ。君はあまりにも自由で、善人過ぎる。君といると、汚い自分が浮き彫りになって、嫌になるんだよ」
嫌という言葉はなかなかに強い力がある。エリシュカは少し委縮してしまった。
「……あー、ごめん。君が悪いわけじゃないんだ。ただ、辛い。俺たちは平民だから、そういうものだと思って割り切って生きてきたんだ。リーディエのときもそうだったけど、これまでは、ただ黙って我慢していればいいと割り切れていたものを、君はあっさりと越えようとしていくじゃないか。それで、イライラしていたんだよ。……俺が君に壁を作っていたの、気づいていたんだろ?」
エリシュカは黙って頷く。彼の心情が、そんなに複雑だったとは想像もしていなかったが。
自分の思うように動くことで、他の人すべてに、いい影響を与えるわけではないことを突き付けられた気分だ。
「え?」
「それがこの街の普通なんだ。金目のものは見つけたもの勝ち。落とした奴が馬鹿なんだ。……エリシュカには思いもしなかったことだろう?」
呆然としているエリシュカに、ヴィクトルは目を伏せる。たしかに、治安のよくない街だとは思っていたが、予想以上だった。エリシュカの常識では、他人のものは他人のものだ。落とし物ならば、捜して持ち主に返すのが正しいことだと信じて疑っていなかった。
「正直、君は平民にはなり切れないと思う。良くも悪くも、お嬢様なんだよ。だから俺は、君に対する態度を決めかねているんだ。君はオーナーの姪だ。愛想よくしておくに越したことはない。だけど時々無性にイライラするんだ。君はあまりにも自由で、善人過ぎる。君といると、汚い自分が浮き彫りになって、嫌になるんだよ」
嫌という言葉はなかなかに強い力がある。エリシュカは少し委縮してしまった。
「……あー、ごめん。君が悪いわけじゃないんだ。ただ、辛い。俺たちは平民だから、そういうものだと思って割り切って生きてきたんだ。リーディエのときもそうだったけど、これまでは、ただ黙って我慢していればいいと割り切れていたものを、君はあっさりと越えようとしていくじゃないか。それで、イライラしていたんだよ。……俺が君に壁を作っていたの、気づいていたんだろ?」
エリシュカは黙って頷く。彼の心情が、そんなに複雑だったとは想像もしていなかったが。
自分の思うように動くことで、他の人すべてに、いい影響を与えるわけではないことを突き付けられた気分だ。



