「どうぞ!」
「……エリシュカの夜食だったんじゃないの?」
「リアンにお土産のつもりだったんですけど、どうせ夕飯は叔父様ととってくるでしょうし、まだ温かいうちにヴィクトルさんに食べてもらった方が、串焼きもうれしいです」
屈託なく笑えば、ヴィクトルはほとほと困ったというような表情だ。
「参ったなぁ……」
「食べていてください。私、捜してますね!」
「待って、エリシュカ」
ヴィクトルは強引にエリシュカを引っ張ると、隣に座らせる。
「一緒に食べて、それから一緒に探そう。君になにかあったら、リアンにもオーナーにも怒られるよ」
「はあ」
とりあえず食べてはくれるようなので、エリシュカはおとなしく待った。
「私はお腹いっぱいなんです。いま、リーディエさんとご飯を食べてきたところなんですよ」
「リーディエと?」
最初こそ遠慮していたヴィクトルだったが、お腹が空いていたのは本当だったようで、包みを開けた途端ごくりと喉を鳴らし、勢いよく食べだした。
「へぇ。珍しい。本当に仲良くなったんだ」
「リーディエさんは頼りになるお姉さんみたいで、私、大好きです」
「君は本当に平和だねぇ……」
指についたたれをぺろりと舐め、ヴィクトルは吹っ切ったようにほほ笑んだ。
それは、今までの一線を置いたものとは違う。エリシュカはホッとして彼をじっと見つめた。
「ごちそうさん。うまかったよ。でもね、エリシュカ。なんとも思っていない男にじゃあまりこういうことをしない方がいい。君は女の子なんだし」
「もちろんです。でもヴィクトルさんは職場の同僚ですし、私にとっては兄みたいなものですから」
「兄ねぇ……」
串で歯の隙間をいじるような仕草は、ヴィクトルには珍しい。だが貧民街の出身だと言っていたし、昔はきっとあたり前のようにしていたのだろう。店でのヴィクトルの所作は、彼が訓練して身に着けたものなのだ。



