没落人生から脱出します!

 店に戻ると、リーディエが迎えてくれた。

「あれ、リーディエひとり?」
「ええ。店長はブレイク様に呼び出されて。ひとりだと不安だったので、ふたりが帰って来てくれてよかったです」

 胸を撫で下ろすリーディエに、エリシュカもホッとする。たしかに、女性ひとりのときになにかあったら大変だ。
 ヴィクトルは荷物を下ろし、事務所に角材等を片付けに行った。

「……なんか元気ない?」

 他に客もいなかったためか、リーディエがそっと尋ねてくれた。

「いえ、特には……ないんですけど」
「そう?」

 感情を隠せない自分が嫌になる。前にブレイクが言ってくれた、『君は自分を大切にするのが上手だ』という言葉も、今はうまく切り替えられない。最初から嫌われているのなら平気なのに、表面だけ取り繕われることが、どうにも居心地が悪い。

「そういえば、店長から伝言。遅くなるから、ひとりで夕飯を食べろって」
「そうなんですか」
「ね、たまにはふたりで夕飯食べに行かない?」
「え?」

 一瞬、何を言われたのか分からなかった。
 リーディエはふわりと笑うと、「仕事の後よ。外で食べたことなんてないんでしょ? たまにはいいじゃない。ちゃんと帰りは送ってあげるわよ」と言った。

「そんな、リーディエさんの帰りが遅くなります。大丈夫です」
「私は慣れてるもの」
「私も慣れなきゃですもん」

意気込んで言うと、リーディエが噴きだした。ふたりで笑い合っていると、奥からヴィクトルが走ってくる。

「悪い、リーディエ、エリク! 俺、早退するから」
「早退って、ヴィクトルさん?」

 何やら慌てた様子で、走っていってしまう。

「なにかあったのかしら。まあいいわ。もうすこしで閉店だし。……あ、いらっしゃいませ」

 そこにお客が入って来たので、話は途中になってしまった。