リーディエの事件にひと段落がついてから、ふた月が経つ。

「たまにフレディさんが覗いているのが気にはなりますけどね」

 フレディは、たまに姿を見せるのだが、護衛に止められているのか、道路の反対側から覗くに留まっている。
 エリシュカやリーディエがたまに気づいて会釈をすると、うれしそうにほほ笑むので、なんだかこちらが罪悪感を覚えてしまう。

「彼本人は、純粋に友達が欲しいだけなんだろうけどな」
「友達なんて、必死こいて作るものかね」

 あきれたようにつぶやくリアンに、ヴィクトルが厳しい言葉を返すのを、エリシュカは苦笑しながら聞いた。エリシュカにはフレディの気持ちがわかるからだ。
 貴族の子女は、学校に入るまでは案外自由がない。親同士、交流のある貴族の子女の年齢が近ければ友人ができることもあるが、そうでなければ基本、出会いがないのだ。
 普段、周りにいるのはいくら仲が良くても召使。なかなか友人という立場にはなれないだろう。

(リアンとも、そうだったのかな)

 エリシュカの胸がチクンと痛む。リアンもキンスキー伯爵家の使用人だったことがあるのだ。いまだに、はっきり思い出すことはできないけれど、思い出してしまったら、彼が遠くに行ってしまうような気もする。とはいえ、共有していたはずの思い出も失ったままなのも寂しい。エリシュカは内心複雑だ。

「……寂しいんだと思います」

 エリシュカは、小さな声でフレディを擁護した。ヴィクトルは聞こえてはいたようだが、それについてはコメントしてこなかった。