「綾瀬も嫌なら嫌だって言った方がいいよ」
「そんな……」
2人の間に入ることができず、外から見守っていると、不意に藤ヶ谷くんから話を振られた。
びっくりはするけど、拒否したいほど嫌というわけではない。
ちらっと顔を上げてみると、不安そうな目でこちらを見る天馬くんと目が合った。
年上で、お姉ちゃん気質があるからなんだろうか。
そんな目で見つめられると、突き放すことができなくなる。
「大丈夫だよ」
わたしがそう答えると、パァっと嬉しそうな笑顔を見せた。
まだ小1で幼い悠太と重なって、思わずよしよしと抱きしめたくなる衝動を必死に押えた。
「あ、そうだ。 これを持ってきたんですよ! どこに置いておいたらいいですか?」
天馬くんが視線を移した先にあったのは、頼んでいた資料のコピー。
そっか、天馬くんは仕事が終わったことを知らせに来てくれてたのか。
心臓に悪いことが一気に起きすぎて、こんなに存在感のある資料の束に気が付かなかった。