───2年後、春。
大きなレンガ造りの建物。
広すぎるくらいのキャンパス。
そこである人を待つ。
桜の花びらが散っていく様子を見つめながらベンチに座り、心地よい温かな風に髪を揺らしていた。
「初花せーんぱいっ」
大好きな声が、わたしの名前を呼ぶ。
立ち上がって振り返ると、そこにはまだ違和感のある綺麗なスーツを身に纏う央翔くんの姿があった。
「お待たせ」
そうふわりと、今も変わらず子犬のような笑顔を見せる。
「央翔くん、入学おめでとう」
「今日からまた先輩と後輩ですねっ」
「先輩をなめちゃダメだよ?」
「そう言う初花先輩こそ、後輩だからって僕をなめちゃいけませんよ?」
ピカピカに磨かれた黒い靴で、こちらへ向かってくる。
「初花先輩、大好きです」
「わたしも、央翔くんが大好き」
これからもずっと、央翔くんが好き。
央翔くんとの大学生活幕開けのキスは、桜の木の下で。
─番外編・end─



