「ずるいですよ、綾瀬会長っ」
何がずるいのかよくわからない。
何かしてしまったかと1人で考えていると、天馬くんがやっと顔を上げて答えてくれた。
「突然下の名前で呼ぶなんて、反則です」
「下……央翔くん?」
「もう……綾瀬会長は僕に襲われたいんですかっ!?」
「お、襲っ!?」
次に頬を赤くするのはわたしの番。
わたしはそんなつもりで言ったんじゃ……
ただ、結衣と悠太がそう呼んでいたから。
「あんまり煽ると僕だって理性保てなくなるのでやめてください」
「ご、ごめんっ」
いつも余裕そうな天馬くんが取り乱すなんて、珍しい。
そういうわたしも、ドキドキが収まらなくて心臓が口から飛び出しそう。
「じゃ、行きましょ!今日は楽しまなきゃ!」
コロッと変わって、いつも通りの天馬くん。
わたしばっかりこんなにドキドキして。
やっぱりずるいのは、天馬くんだよ。



