「目のクマは酷いし、顔色も悪いし、絶対体調悪いですよね?」
「……近いよ、天馬くんっ」
「ほら、おでこ熱いじゃないですか!」
おでこを合わせて熱を測ってみれば、体温計なんて使わなくてもわかるくらい熱かった。
「そんなこと……」
「綾瀬先輩っ!!」
何かの糸が切れたかのように、僕の胸の中に倒れ込んできた先輩。
咄嗟に腕を回して、先輩の体を支えた。
ほら、やっぱり無理してる。
あんなに何回も大丈夫か聞いたのに。
"大丈夫"って言ってる時ほど、本当は大丈夫じゃないのなんてお見通し。
どれだけ僕が先輩のこと見てると思ってるの?
「綾瀬先輩、立てますか?」
そう声をかけても、弱々しい返事しか帰ってこない。
「ちゃんと掴まっててくださいね」
先輩がコクンと小さく頷いたのを確認して背中に乗せる。
一度水族館デートをした日、先輩を家まで送ったことがあるから、なんとなく帰り道は覚えている。
なんとか連れて帰ってあげられそうだ。