「ふはっ。危ないですよ、綾瀬会長! それにしても大胆ですね?」
「わっ、えっ……ご、ごめんっ!」
転んでしまったわたしを天馬くんが下から支えてくれているだけなんだけど。
傍から見れば、わたしが天馬くんを押し倒しているようにも見える。
下から見上げてわたしの瞳を覗き込む天馬くん。
なんだか恥ずかしくて、みるみるうちに頬が赤く染っていくのが自分でもわかる。
「い、今避けるから……って、天馬くんっ?」
胸がおかしいくらいにドキドキして、早くここから離れたいのに、天馬くんはわたしの腕を掴んだ手を離してはくれない。
「綾瀬会長は、僕を煽るのが上手ですね」
「あ、煽ってなんか……っ!」
「その真っ赤な可愛すぎる顔、他の男に見せたら……僕、嫉妬で狂ってしまいそうです」
「なっ」
わたしのことをそう言うなら。
天馬くんは、わたしの心を掻き乱す天才だよ。
天馬くんのことになると、こんなにも胸がドキドキする。
「なぁ、お前何やってんの?」
……藤ヶ谷くんは、いつも登場するタイミングが本当に悪すぎる。



