そうだよね、たまたまだよね。
穂乃実ちゃんと天馬くん、お家の方向同じなんだ。
嫌なことが、頭の中をぐるぐると回る。
わたしってば、さっきからこんなことばかり……
一体、どうしちゃったの?
「綾瀬会長? どうかしました?」
「へっ、ううん、なんでもないよ!」
何も喋らないわたしを心配そうに覗き込んできた天馬くん。
ドアップに映る顔にドキッとする。
「本当ですか? 今日暑いし、熱中症になったら困るのでちゃんと言ってくださいよ?」
「ふふっ、うん、大丈夫だよ」
まるで過保護なお母さんのよう。
なんか可笑しくなっちゃって……
思わず声を出して笑ってしまった。
「もうっ! 僕、本気で心配してるんですからね!?」
「うん、わかってるよ。ありがとう」
「はい、わかってくれれば……って、まだ笑ってるじゃないですかー!」
だって、面白いんだもん、天馬くん。
笑っているうちに、胸の痛みは消えていた。



