「暴力反対! もう、照れ屋なんですよ」
「あははっ、本当に仲良しだね」
2人の言い合いも、わたしには痴話喧嘩のようにしか見えなくて。
「そんなことないですよ」と訂正してくる絢ちゃんだけど、本当に微笑ましいくらいにお似合いの2人だ。
「綾瀬会長ーっ!」
天馬くんの声はすぐにわかる。
名前を呼ばれて振り返ると、ここからでもわかるくらい満面の笑みの天馬くんがいた。
そして、その隣には穂乃実ちゃんがいる。
……チクッ。
なに、今の。
いつも天馬くんの隣にいるのはわたし。
今、天馬くんの隣にいる穂乃実ちゃんを見て、何故か胸がチクチクと痛む。
それがなんでなのか、全然わからない。
「あれ? 2人で来るの珍しいね?」
わたしが思っていたことを、絢ちゃんが2人に問いかけた。
わたしも気になって、そっと耳を傾ける。
「わたしたち電車が同じ方向みたいで、ちょうど同じ電車に乗ってたんです」
「それで改札口でばったり会って、せっかくだから一緒にここまできたんですよ」
穂乃実ちゃんに続いて、天馬くんがそう答えた。



