しばらくしても、触れられなくて恐る恐る目を開けた。
「綾瀬会長、なんで逃げないんですか」
「えっ」
そこには、まっすぐにわたしを見つめる天馬くんがいて。
「そんなことしたら僕、期待しちゃいますよ?」
「えぇっと……」
優しく微笑んでいた。
そんな天馬くんに、どう答えたらいいのかわからない。
「なーんて、まだそんなことしませんよ」
そう笑った天馬くんは、いつもの天馬くんで。
「綾瀬会長が僕を見てくれるようになるまでお預けですっ」
そこでやっと体の力が抜けて、大きく息を吸うことができた。
「もう! からかうのはやめてって言ってるのに」
「からかってませんよ? 僕だって本気なんですから」
「……んっ!」



