「僕が考えていたことは───」
「……っ」
1歩ずつゆっくりと近づいてくる天馬くんに詰め寄られ、棚に背中がついてしまったわたしは、身動きが取れなくなる。
「今すぐ、綾瀬会長にキスしたい」
「……!?」
上から見下ろされたまま、綺麗な人差し指で唇をなぞられる。
その手で、クイッと顎を上げられた。
そのせいで、ばっちりと視線が合う。
もうイタズラっ子のような笑顔じゃなくて、色っぽい男の子の顔。
天馬くんの黒い瞳に吸い込まれてしまいそう。
心臓がドキドキと大きな音を立てる。
静かな資料室にこの音が響いてしまうんじゃないかと思うくらい。
どんどんと近づいてくる天馬くんの顔。
本当に、キスされちゃうの?
キスなんか、今まで一度も……
体が全然動かなくて、ギュッと固く目をつぶる。



