「…き、聞いてたのか、真崎…」
ぐいっと乱暴に涙を拭った柚。
それでも沈黙を吹き飛ばすように、笑顔を無理矢理に作った。
「女装ってひどいな恭平君…!あれでも私の生まれて初めての告白だったんだよ!?」
そんなものにホッと胸を撫で下ろす数人。
無理しちゃって。
お前ってそういう奴だよね、本当に。
馬鹿だからかな、自分が馬鹿になれば全てが丸く納まるとでも思ってんだろう。
「な、なんだよ!お前なんか男友達みたいなもんだろ!そうそうこいつ俺の彼女!B組の木村、お前も知ってるだろ?」
「初めまして。木村 由香です」
「…は、初めまして真崎 柚です、きょ、橋本くんとは中学からの───」
「知ってます。よく話は聞いてましたから」
そりゃ知ってるだろうね。
たったの今あんなにも貶されてたんだし。
てか、あいつもなに普通に挨拶しちゃってんの?本当に馬鹿なの?
お前今日はそんな気遣わなくていいってのに。
俺のお昼ご飯あげたのだって、今日だけはお前にとって特別な日にして欲しかったからなんだよ。
───馬鹿だよねぇ、ほんと。



