「あいつああいう男だよ?お前が好きになる程の価値も無いような奴だけど」
それでもこいつはまっすぐだから、疑う心も無いような奴で。
あーあ、そんな純粋さを利用されちゃったんだねお前。
騙されやすくて扱いやすいから。
でもさ、それって俺だけが利用していいことなんだよ。
「柚、お兄ちゃんにどうして欲しい?」
「…っ…、ぅぅっ…」
「泣くなって。お前がそんなに泣くなんて珍しいじゃん」
ていうか初めてだよ。
お前を泣かせるのは俺じゃなきゃ駄目じゃん。
…あれ、なに言ってんだろ俺。
「…それにお前今日さ、」
誕生日だよ。
こんな顔させたかったわけじゃないのに。
泣かせたかったわけじゃないんだよ。
「───…真崎?」
そんな柚に気付いた板前は俺達に近付いて来ようとするから。
柚は咄嗟に俺を庇うようにして、そいつの前へと姿を表した。



